田亀源五郎「ウィルトゥース」
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時は帝政ローマの頃。剣奴として連れてこられたガイウスは、全てに絶望し、死んだような目をしていた。人気剣闘士のクレスケンスはそんなガイウスを、圧倒的な力の差を使って犯す。クレスケンスへの憎しみから生きる活力を取り戻し、クレスケンスを倒すために剣闘士への道を進んでいくガイウス。しかし実はクレスケンスは、ガイウスに希望を取り戻させるために、なによりガイウスを愛しているために、ガイウスを犯したというのだ。ガイウスに嫉妬する貴族の女の策略により、ガイウスとクレスケンスは闘技場で戦うことになる。「激男」に掲載された作品に、書き下ろしの結末と短編を加えた作品集。
田亀源五郎といえばゲイコミックの第一人者。ガチムチ筋肉、体毛描写、ぶっとい線、はっきりしたキャラと、BLの表現とはさすがに違ったハードな表現になっています。そこで違和感を感じる人もいるかもしれません。それにBLには非常に珍しく、包茎ちんこが描かれますし(ローマ時代ですからね)。ですがベースにあるのはラブです。えー、そんな結末? と言ってしまいたくなるほどのラブっぷりです。ですから見た目のハードさに比べて、非常に安心して読める作品だといえましょう。それに構造的には内田カヲルの作品と大して変わることはありません。筋肉、体毛、実はラブラブ…なんだ、全然変わらないじゃないですか。ですから内田作品に親しんだ女性なら、田亀作品は普通に「読める」ものです。BLのレーベルで出したオークラ出版の読みは正解ですね。ちょっと怖い、ちょっと違うと思っている女性も多いと思いますが、どんどん手にとって欲しいと思いますね。
そして、これは非常に興味深い「越境」を生んでいます。BL漫画とゲイ漫画の境界が、ものすごく低くなっていることを示すのですから。内田カヲルの作品はゲイ漫画と表象的には変わらなくなっていますし、田亀源五郎の作品は内容的にはBLと変わらなくなっています。実際BLともゲイ漫画とも見分けがつかない「激男」(古川書房)はもう10冊も続いています。それはBLがハード化し、リアル志向になっていることの当然の帰結でしょうね。BLで描かれる男たちの関係が生々しくなるほど、男たちの身体がリアルになるほど、リアルな男を描くゲイ漫画に接近していくのですから。そしてこの動きはこれからも加速していくでしょう。そうなるとBLというものは、わたしたちがこれまで見てきたものとは違った領域を形成していくかもしれません。オークラ出版のこのシリーズ(「AQUA肉体派シリーズ」)や、「激男」は、その動きの先頭にあるといえるでしょう。
まあこうした新しさの面でも興味深いんですが、この作品集にはもう一つ重要な作品があるんです。日露戦争を舞台にした作品で、特命を帯びた少佐が師団長閣下に報告する…というモチーフの作品です。当然少佐攻師団長受です。師団長閣下は中将でおじいちゃんです。そして白髪で立派なおひげです。見た目は威厳があって恰幅もいいんですが、実際当時の中将ですからものすごく偉いんですが、いざやおい関係においては受になるんです。「誰の所為でこんな恥ずかしい躯になったと思っとるんじゃ…」とか言っています。
うおおー! おひげのおじいちゃん激萌えー!
このおじいちゃんがかわいいんですよ。いわゆるツンデレっちゅうんですか? 自分がエロモードに入っていることを必死に否定しようとしますが、体はそんなことは言っていません。そして最後には大人の(おじじの?)包容力を見せます。いやー、おじいちゃんという存在がこんなにエロい存在だとは気付きませんでしたよ。灰になるまでとは良く言われることですが、人間歳をとってもエロくあり続けることは全然可能なんですね。むしろ歳を重ねるほどエロくなると言ってもいいでしょう。これからじじい萌えは間違いなく「来る」な、と思ったのでした。もちろんばばあ萌えもですが。
「若くてぴちぴちの肉体こそが最高」という一般的な理念は、やっぱり誰かが得をするために無理矢理作りだしたプロパガンダなんだなー、と思いますね。ですからこの作品は、そんな迷信を打破して、それぞれの年齢の人が自ずと持っている性的魅力を正当に評価する動きの先駆けなんだよ!!!!! と叫んでおきたいと思います。
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Yes! 腐漢ライブラリーさん
オークラ出版
2007年11月12日発行
2007年11月10日購入
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コメント
たいまつさん、こんばんは。
記事を読ませて頂き、BLとゲイ漫画の境がなくなりつつあるというのは実感しています。
実際、自分の中でこの2つのカテゴリーは区別されていません。
急に『手元にある本を振り分けてみよ』と言われると、かなり右往左往しそうです。
今後、これらがどのような方向に向かって行くのかとても楽しみでもあり、少々不安ですね。
追記:おじいちゃんはやっぱり「かわいい」で正解なんですね!よかった~
投稿: 4da | 2007年12月12日 (水) 21時50分