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2008年1月 8日 (火)

古街キッカ「洋6K2南向き」

 仕事に疲れ、心機一転をはかった前田が越してきた隣の部屋には、2年前ケンカ別れした元彼の佐藤が住んでいた。あいたくない、と思う前田だが、佐藤のバイト先は最寄りのコンビニ。携帯のメモリーも消去し、完全に吹っ切ったはずなのに。引っ越したため前田は極貧生活を送る。見かねた佐藤はご飯を作ってやったり、引っ越しの片付けをしてやったりする。給料が入り、佐藤におごり返す前田だが、前田の飲み方はだらしなく、べろべろに酔ってしまう。口うるさく世話をする佐藤、いろんな面でだらしない前田…「俺、なんでこいつがいいんだ?」と自問する二人。「Hertz」に掲載された作品を集めた短編集。

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梅雨 友達攻×無計画不倫受
夏  年下学生攻×美人男ヒモ受
秋  メガネ不思議攻×路上詩人受
冬  元ヤン守る攻×アホの子守られる受
春  元彼しっかりメガネ攻×酒乱だらしない受(表題作)

 と、様々なタイプのカップルが描かれます。静かな「間」と、丁寧な心理描写で読ませる作劇の方法は前作『さくらにあいたら』と一緒ですね。それに展開は単調ではなく、生々しい要素も加わっています。梅雨の季節の作品「グッバイ・レイン」では、婚約者がいる男とつき合っている男が描かれます。もちろん婚約者との間で修羅場になるんですね。また夏の作品「熱帯夜のアストロロジー」では、美貌で世の中を渡ってきた受が、ひどいDVにあってボッコボコにされる姿が描かれます。もちろん最後にはBL的展開を経てハッピーエンドになるんですが、それに至る展開はかなり生々しく、痛みを感じます。古街キッカの作品は、絵はオサレ系というか、あっさりキレイキレイなのですが(そこも魅力ですが)、お話は重厚なんですね。加えて今回の作品集ではお話のバリエーションも増えています。

 それに全ての作品が、緩やかにリンクしているのがいいんです。作品の間には、作品どうしをつなぐ2ページのつなぎ部分があります。また一つの作品の主人公が、他の作品に登場します。路上詩人は他の作品のカップルに示唆を与える存在として出てきますし、メガネ不思議攻は街のゲイバーの常連として登場します。登場人物たちは、ひとつの街に住み、同じ時間と空間を共有しているように見えるのですね。そしてそれはリアルな空気感を生みます。登場人物たちが直接・間接につながることによって、本当に息づいているような感覚が生まれるのです。
 加えて作品が進むに従って、季節も移り変わって行きます。梅雨の季節に始まった単行本は、再び梅雨の季節に戻ってきます。そして最初に出てきた二人は、少し間隔が近づいています。時間の点でも広がりが感じられるのです。季節はめぐり、そして人生は進む。さびしい心を抱えた男たちの間にも関係が作られていく。ロード・ムービーのような感動が生まれるのです。
 登場人物たちが一つの街に住み、互いに交流しているという「空間的広がり」は、ヤマシタトモコ『くいもの処明楽』や、SHOOWA『Nobody Knows』で見ることができました。ですがこの作品は、季節が刻々と変化していくという「時間的広がり」もはっきりと意識しています(「年下攻め本舗」さんや「BL STUDY」さんでも指摘されていますね)。この作品は見た目は地味かもしれませんが、実に画期的な作品だといえるでしょう。

 あー、誰かこの作品を映画化しませんかねー。この作品に流れる空気感と緩やかなつながりを再現できたら、非常にいいオムニバス映画になると思うんですがねー。

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ネクラで眼鏡でキモオタな優等生は"受け"るとイイよ!さん
la aqua vitaさん

大洋図書
2008年2月10日発行
2007年12月27日購入

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