まさお三月「身勝手なあなた」
夏目先輩はいつも男をとっかえひっかえしているが、相手がいないときはふらりと辰雄の家を訪れ、セックスをせがむ。辰雄はそんな先輩のために、好きでもない手料理を作り、ずっと待っている。辰雄を頼る夏目先輩だが、辰雄の思いは通じていない様子だ。体はつながっているのに、心はつながっていないことに、辰雄は苦しむ。「マガビー」などに掲載された作品を集めた著者の初単行本。
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「男だから」ということに常に自覚的なところがいいですね。たとえば「甘くない」のふたり。二人は相思相愛で幸せなんですが、受けの三昭は異様に周囲にばれることを嫌がります。「人前でベタベタしていたらふたりがデキてることがバレるだろ!」と。男性が普通にやる程度のボディタッチにさえも、かたくなな姿勢を崩しません。また父親の「再婚」相手が男だったという少年の視点から描いた、「幸せな人たち」という短編もあります。文昭少年(メガネっ子)は、父はなぜ男を選んだのだろうと思い悩みます。男同士に偏見はないつもりですが、それでも釈然としません。この迷いや苦しみが、説得力あるドラマを生むんですね。そしてそれは特に男性にとって説得力を持つものになります。なんたってそうした戸惑いは、男性こそがリアルに、生々しく感じるものなのですから。
そして悩みや苦しみを描くのですが、最終的にハッピーエンドになっていくのがいいんですね。確かにハッピーエンドはBLのお約束です。ですがこの作品では、登場人物たちが努力して、周囲と折り合いをつけながら、なんとか幸せにこぎ着けます。飛躍したりファンタジーに逃げるのではなく、実際にありそうな解決を目指すのです。ブレイクスルーのカギになるのが愛のあるエロエロのセックスです。セックスで二人の絆を確かめて、状況に対して向かい合っていくのです。これは二重に来ますね。二人で協力して苦難を乗り越えようとするわけですし、なによりエロいことをして絆を深めていくんですから! いやいや、「BLの物語のちから」という帯の文句に偽りはないなあ、と思ったのでした。
絵が非常に美麗なところも見逃せません。ホームラン・拳と、山本小鉄子に近い系統の絵なんですが、等身が高く顎長人ぎみで、アダルトな雰囲気があります。あと力を抜いて描いた絵もいいんですね。
それにメガネ率の高さ!メガネキャラが出てこない作品は1本しかありませんよ。それにショタメガネもいいんですよ。文昭きゅん13歳の愛くるしさときたら!
まあちょっと考えすぎのところはあるように思います。「のだだがBL読んだ。」さんでも指摘されているように、男同士の関係性に過剰反応しているところがあるかな、と思えるのですね。男どうしの関係を意識すればするほど、男どうしの関係が「特別な」「普通じゃない」関係に見えてくるのですから。ただそれは「ちゃんと男と男のラブを描こう」「現実に即して描こう」とする努力の結果だと思います。初単行本とは思えない完成度の高さ。こういう作家をきちんと発掘してこれるところに、リブレの底力があるのでしょう。
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BLな毎日さん
ムスカリアさん
リブレ出版
2008年1月10日発行
2008年1月10日購入
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コメント
たいまつさん、初めまして、こんにちは。
TB送っていただいて、ありがとうございました。
この作家さん、オススメいただいて読んだんですが、初めてのコミックスとは思えないほどの出来で、びっくりしました。
絵もお話もよかったです。
>男同士の関係性に過剰反応しているところがあるかな
たしかにそう思いました。
男女の付き合いでも、気にする人は気にするし。
あまりな不自然さでばれちゃうぞ~って、思っちゃいました。
作り物って言うよりも、そのへんに転がっているような恋愛に好感が持てました。
これからも、要チェックな作家さんだなと。
こちらからも、TB送らせてくださいね。
投稿: あけみ | 2008年2月 7日 (木) 12時14分
初めましてvv森と申します。
TBありがとうございました。こちらからもTBお返ししたいと思います。
>飛躍したりファンタジーに逃げるのではなく、実際にありそうな解決を目指すのです
だからこそBLファンタジーであるのに、そこに我々も「萌」を感じるのでしょうね。ファンタジーであってファンタジーで非ずです。
画力がしっかりしていて、可愛らしいのに艶っぽく感じる作家さんは貴重です。次の作品にものすごっく期待大です!
投稿: 森 | 2008年2月 7日 (木) 14時41分