« 日本記号学会大会「遍在するフィクショナリティ」 | トップページ | 北別府ニカ「すくすく好き好き」 »

2008年5月19日 (月)

彩景でりこ「傷だらけの愛羅武勇」

 清士郎は狂犬とも呼ばれるヤンキー。つるんでいる連中を片っ端からボコり、怖れられている。そんな清士郎に対し、一つ上の上坂は毎日タイマン勝負を仕掛けてくる。表面的にはウゼーという姿勢を示す清士郎だが、上坂の侠気と毎日挑んでくる律儀さにすっかりメロメロ☆になっている。自分の気持ちを素直に示せない清士郎は、とうとう上坂を無理矢理ものにしようとするが、全力で拒まれ、見損なったと言われる。廃人のように凹む清士郎だが、次の日上坂はまた挑んでくる。「お前俺のこと好きなのか?」と。「カタログシリーズ」に掲載された作品を集めた初短編集。

傷だらけの愛羅武勇 (MARBLE COMICS) 傷だらけの愛羅武勇 (MARBLE COMICS)
彩景 でりこ

ソフトライン 東京漫画社  2008-04
売り上げランキング :
おすすめ平均 

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 見た目はハードなヤンキー漫画です。清士郎も上坂もとてもBLという描写ではなく、ガチのヤンキーとして描かれています。上坂はヤンキーヒゲ生やしてますし。それに暴力描写はかなりえげつなかったりします。
 ところが清士郎は、一方で気にくわない奴を全員ボコるヤンキーマインドを持っていますが、もう一方でピュアな恋心を持っているのですね。外見はガン飛ばしまくってますけど、内面は上坂に話しかけられてキュンキュンしているのです。このギャップ! そして清士郎は恋心と一緒に、上坂に対してガチの性欲を抱いています。上坂を押し倒して拒まれるのですが、その時触ったちんこの感触にハァハァしまくりです。見た目こそおっかなげな作品なんですが、実はハードな外見と、戯画化されたピュアロマンス、そしてガチの性欲の間に生まれるギャップが笑える作品になっているのです。
 それが端的な形で現れているのが「妄想兄弟純情系」という作品ですね。兄はかわいい弟のフミにメロメロだった。

Saike02

 ところが2年のアメリカ留学を終えて帰ってきたとき、フミは兄より背が高くなり、ヒゲを生やして、アフロになっていた…という作品です。

Saike01

 いやーもう業が深いこと。兄が愛していたフミはショタっ子でした。ですが今のフミはどう見てもストリート系の兄ちゃん。でも内面は可愛いショタっ子のまんまなのですね。男性性バリバリの外見に可愛さが無理矢理結びついているので兄ちゃんは悩むのですが、その悩みは読者からすると大笑いできるギャグの源です。ハイテンションなギャグはたまらない面白さがあります。

 やっぱり面白いのは、男性性に疑問を感じることがなさそうな男に、無理矢理可愛さやピュア恋愛を結びつけていることですね。それがパンチ力の強いギャグになっています。それにBL的にもそそるものがありますね。ストリート系の兄ちゃんがボーイズなラブを繰り広げていくわけですが、そのことによってストリート系の男たちが持っていると思われる男性性へのこだわりが、どんどんぐずぐずになっていくのですから。そして「男らしさ」を目指していた男たちは、ロマンティックラブのとりこになっていきます。これは男を「陥落」させることですね。どんなにいきがっていても、どんなにツッパっていても、ラブにはかなわないのですから。

 テンポの良さ、絵の上手さと、これから大きく存在感を示しそうな作家です。一つ気になるのは、女性を上手く、可愛く描けること。攻と受が両方オカマという作品があるんですが、BLなんですけど見た目がほとんど百合なんですね(このことについては「プチ鬱読書人形日記」さんと「BL系。」さんで指摘されていますね)。BL以外もそつなく描けそうですし、BL以外でも活躍しそうなんですよね。それはそれで喜ばしいことですが、この作品で描かれるような「男をいじる漫画」も描き続けていって欲しいものだと思います。

東京漫画社
2008年5月15日発行
2008年5月5日購入

|

« 日本記号学会大会「遍在するフィクショナリティ」 | トップページ | 北別府ニカ「すくすく好き好き」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/39430/41260857

この記事へのトラックバック一覧です: 彩景でりこ「傷だらけの愛羅武勇」:

« 日本記号学会大会「遍在するフィクショナリティ」 | トップページ | 北別府ニカ「すくすく好き好き」 »