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2009年9月

2009年9月 8日 (火)

松本ミーコハウス『テレビくんの気持ち』

蒼太 月9にも出演するようになった人気急上昇中のアイドル。顔はとてもいいけれど、しゃべり方はちょっと舌足らず。圭輔のことが昔から好き。
圭輔 大学生、自分のことをキモメンと思っている。

小泉 売り出し中のアイドル。本当は身の回りの事は全部自分でできるのに、マネージャーのうっちーに甘えて、なんにもしない。世話を焼いてもらう。
うっちー マネージャー。きまじめな性格。

道隆(20歳) コンビニの店長、父が倒れたため若くして店長になる。元ヤンキーのリーダーで人格者。人望も厚い。
須藤(25歳) コンビニチェーンの社員、眼鏡、まじめ。道隆の父が倒れたのは、自分のせいだと気に病んでいる。
…という3組のカップルの、デキる前、デキた後をそれぞれ描いた短編集。

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 まず3組のカップルが、ゆるやかにつながっているのがいいですね。圭輔は、道隆のコンビニでバイトしてますし、蒼太は小泉とアイドル仲間ですし。1冊の本が「世界」を作るっていうんでしょうか、人が生活している「街」を舞台にして、物語が紡がれていくのがいいんですね。同じ手法は古街キッカの「洋6K2南向き 」でも使われていましたが、キャラクターたちへののめり込み方が深まります。
 それから、それぞれのカップルがデキていく過程がいいんですね。どのカップルもフェロモン系とコンプレックス系のカップルです。受の人たちは、自分に自信がなかったり、過去にトラウマを持っていたりして、自分にも相手にも素直になれないんですね。「あんなすごい人に自分はそぐわない」と思ったりしています。だから自分から別れようとしたり、恋心をなかったことにしようとしたりするんですよ。このいじけっぷり!
 フェロモンの人の方がコンプレックスの人のことを好きなので、手を伸ばせば恋は手に入るんです。ですが心がいじけちゃってるんで、自分から手を引っ込めてしまうんです。これは恋に慣れてない男性が結構やっちゃうことで…ですから男心をズキュウンと刺激するんですよ。そういや私もこのいじけモードが長かったですしねー。それを端的に示しているのが、受のメガネです。受は3人ともメガネなんです! メガネは外界からの防御壁。直接現実世界に触れるのがつらい、コンプレックスを持った人の必須アイテムです。受のメガネ君っぷりには、もうドキドキですわ。
 まあそうした難儀な受が集まっているのですが、なんとかカップルは成立します。それは巧みな心理描写のためでしょう。<赤面>が実に効果的に使われているんですね。それが雄弁に男の恋心を語るんです。あとはうるうるお目々も効果的に使われます。これがキクんですわ! 恋愛を怖がっている受も、相手の本気を受け止めざるを得なくなるんです。

 心理描写の巧みさは「みどりのまきば」でも見た通り。作風の広さにもほれぼれしてしまいます。マンガの神に愛されてるなあ、とつくづく感じます。これからの活躍が本当に楽しみな作家さんです。

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2009年9月 4日 (金)

日の出ハイム『春の雨に濡れてゆけ』

 早乙女は大手商社の入社5年目のサラリーマン。入社して、同じ中学出身の大越と再会する。大柄で、人なつっこい笑顔の大越は、中学の頃から野球部のキャプテンで、人気者だった。それはいまでも変わらない。早乙女はそんな大越を、中学の頃から好きで、いまでも目で追っている。そんなとき大越は実家の寺を継ぐため、退社することになる。送別会の時、思いを告げようとするがはたせず、早乙女はへこむ。もう顔を合わすこともないとあきらめていたが、大越と社員証を取り違えていたことがわかる。もう切れたと思われていた大越との関係は、再び結ばれていく。リーマン二人の恋を描いた作品。

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 なんといっても、早乙女の秘めた恋の描写がいいですね。男を好きになってしまった早乙女のとまどい、後ろめたさがよく描かれているんですね。社会人になって、隠さなくてはならないという思いはいっそう強くなります。でも大越が好きという気持ちは止められません。この葛藤!
 一方、大越は早乙女の思いを見透かすような行動を取ります。「オレに気があるのか」とか。実は社員証も、こっそり大越がすり替えたのではないかと思わせます。実は大越も早乙女を思っていたのですね。ところが早乙女は、それを信じていいのかどうか迷います。向こうもこちらの思いに応えてくれそうだ、でも男同士だし、罠かもしれないし、もし失敗したら関係修復は絶対無理だし…ということで、早乙女は迷いまくります。この迷いがいいんですよ! これは世の男性も結構感じる、馴染みのある迷いなのではないでしょうか。ですから男性にとっても、かなりズキュンと来ます。男心を揺さぶります!
 そしてヒキが強いほど、思いが通じたときの感動は大きいもの。ガッツリやりまくる二人の姿は、浅ましいほどなんですが、それはそれだけ二人の迷いや葛藤が大きかったことを示します。祝福したくなるわけですよ。ちょっとうらやましさも感じますが。

 ムキムキガッチリの肉体描写も魅力。後半は少々絵が荒れているところもありますが、相変わらず男心をくすぐる作品になっていると思います。しっかり取材して、どんどん新しい題材にチャレンジしているのもいい感じです。今後の作品も期待大です。

廣済堂出版
2009年9月17日発売

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2009年9月 3日 (木)

さかもと麻乃 『ほんとの事、言っちゃって!』

 中井は、他人をいじって楽しむのが好き。人をいじめたり、人の上に立つのが好きで、自分の性格をあまり良くないと自覚している。そんな中井は藤本先輩とつきあっている。藤本先輩は目つきがクールで、誰も彼に命令できない女王様タイプ。そこで中井は藤本先輩の前では猫をかぶっている。本当はもっと痛くしたい、乱暴にしたいと考えているのに。ところが先輩に、猫をかぶっていること、本当はSな性格であることがばれてしまう。その後先輩は口をきいてくれなくなる。実は先輩は…。
 女王様受、へたれ年下攻×ツンデレ受、ケモ耳ものなど、8本の学園ものの短編を集めた作品集。

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 さかもと先生絶好調です。ノマカプ本「おとこのこは魔法」 で、非BLに本格進出するかと思いきや、ちゃんとBLでもナイス作品を見せてくれます。
 まず、全体が学園ものになっているのがポイントですね。1本だけ大学が舞台ですが、あとはみんな高校が舞台。オトナになりかけの美少年を描くにはもってこいの舞台です。登場人物がみんなかわいいんですわ! まつげの長いかわい子ちゃんの描写なんて、もうゾクゾクものです。そんな子が快感に頬を赤らめているところなんて…読んでるこっちもヤバイです!
 そして年下攻も目立ちます。あらすじに挙げた「全部ください」をはじめとして、実に8本中3本が年下攻です。学園もので年下攻っていうのがポイントなんですよ。たった1歳の違いが、具体的な権力関係になって現れる学校という舞台で、年下の方が主導権を握る…この「ひっくり返り具合」がいいんですよ。先輩は、心構えの上ではツンケンしたり、上位に立とうとしますが、いざ恋愛やセックスになると受け身になってしまうんですね。一方後輩は、ちょっとヘタレだったり、ニブいところがあったりしますが、恋愛やセックスにおいては、かなり上手に立ち回ります。ありがちな構造をうまーくひっくり返しているんですね。なかなか難しい構造なんですが、さかもと麻乃はきちんとまとめています。これもゾクゾクものですわ!

 あと、高慢な受(実はM)と、ちょっとヘタレな攻(堅物)という構図も目立ちますね。ああ、やっぱりスザルルなんだな、と思いますね。表紙なんかもろにそんな感じです。この人、非BLに行っちゃうのかな、と危惧していましたが、BLにも強い萌えがあるようで、一安心です。
 ただこの人の場合、萌えの幅が広いんでしょうね。だから百合(リスランタンプティフルール) も描けるし、ノマカプファンタジーも描けるのでしょう。この広い萌えから生まれてくる、BL、百合、ノマカプの混淆した、なんともジャンル分けのしづらい、新しいタイプの作品が生まれてくるように思います。さかもと麻乃という作家は、新たなジャンルを生み出すだけの実力と才能を持っていると思いますし。BL好きとしてはBLに集中して欲しい、かわいい男の子をバンバン描いて欲しいと思いもしますが、ジャンルに縛られることなく活躍して欲しいなあと思います。

芳文社
2009年9月13日発行

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