2008年5月19日 (月)

彩景でりこ「傷だらけの愛羅武勇」

 清士郎は狂犬とも呼ばれるヤンキー。つるんでいる連中を片っ端からボコり、怖れられている。そんな清士郎に対し、一つ上の上坂は毎日タイマン勝負を仕掛けてくる。表面的にはウゼーという姿勢を示す清士郎だが、上坂の侠気と毎日挑んでくる律儀さにすっかりメロメロ☆になっている。自分の気持ちを素直に示せない清士郎は、とうとう上坂を無理矢理ものにしようとするが、全力で拒まれ、見損なったと言われる。廃人のように凹む清士郎だが、次の日上坂はまた挑んでくる。「お前俺のこと好きなのか?」と。「カタログシリーズ」に掲載された作品を集めた初短編集。

傷だらけの愛羅武勇 (MARBLE COMICS) 傷だらけの愛羅武勇 (MARBLE COMICS)
彩景 でりこ

ソフトライン 東京漫画社  2008-04
売り上げランキング :
おすすめ平均 

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 見た目はハードなヤンキー漫画です。清士郎も上坂もとてもBLという描写ではなく、ガチのヤンキーとして描かれています。上坂はヤンキーヒゲ生やしてますし。それに暴力描写はかなりえげつなかったりします。
 ところが清士郎は、一方で気にくわない奴を全員ボコるヤンキーマインドを持っていますが、もう一方でピュアな恋心を持っているのですね。外見はガン飛ばしまくってますけど、内面は上坂に話しかけられてキュンキュンしているのです。このギャップ! そして清士郎は恋心と一緒に、上坂に対してガチの性欲を抱いています。上坂を押し倒して拒まれるのですが、その時触ったちんこの感触にハァハァしまくりです。見た目こそおっかなげな作品なんですが、実はハードな外見と、戯画化されたピュアロマンス、そしてガチの性欲の間に生まれるギャップが笑える作品になっているのです。
 それが端的な形で現れているのが「妄想兄弟純情系」という作品ですね。兄はかわいい弟のフミにメロメロだった。

Saike02

 ところが2年のアメリカ留学を終えて帰ってきたとき、フミは兄より背が高くなり、ヒゲを生やして、アフロになっていた…という作品です。

Saike01

 いやーもう業が深いこと。兄が愛していたフミはショタっ子でした。ですが今のフミはどう見てもストリート系の兄ちゃん。でも内面は可愛いショタっ子のまんまなのですね。男性性バリバリの外見に可愛さが無理矢理結びついているので兄ちゃんは悩むのですが、その悩みは読者からすると大笑いできるギャグの源です。ハイテンションなギャグはたまらない面白さがあります。

 やっぱり面白いのは、男性性に疑問を感じることがなさそうな男に、無理矢理可愛さやピュア恋愛を結びつけていることですね。それがパンチ力の強いギャグになっています。それにBL的にもそそるものがありますね。ストリート系の兄ちゃんがボーイズなラブを繰り広げていくわけですが、そのことによってストリート系の男たちが持っていると思われる男性性へのこだわりが、どんどんぐずぐずになっていくのですから。そして「男らしさ」を目指していた男たちは、ロマンティックラブのとりこになっていきます。これは男を「陥落」させることですね。どんなにいきがっていても、どんなにツッパっていても、ラブにはかなわないのですから。

 テンポの良さ、絵の上手さと、これから大きく存在感を示しそうな作家です。一つ気になるのは、女性を上手く、可愛く描けること。攻と受が両方オカマという作品があるんですが、BLなんですけど見た目がほとんど百合なんですね(このことについては「プチ鬱読書人形日記」さんと「BL系。」さんで指摘されていますね)。BL以外もそつなく描けそうですし、BL以外でも活躍しそうなんですよね。それはそれで喜ばしいことですが、この作品で描かれるような「男をいじる漫画」も描き続けていって欲しいものだと思います。

東京漫画社
2008年5月15日発行
2008年5月5日購入

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年12月19日 (水)

国枝彩香「番人」

 時は戦前。白い髪、赤い目、美しい顔、しかし心の成長は止まったままの少年・霞。その見た目のため、山奥の洋館に幽閉されている。そんな霞の世話をするのは、浅黒いというには黒すぎる肌と、不思議な瞳の色をした寡黙な成年・加納だった。霞の兄の胤彦は久しぶりに洋館を訪れる。洋館は人手に渡ることになり、霞もまた洋館と共に好事家に売られることになったためだ。そこで胤彦は加納に伽を命ずる。そして挑発的に語りかける。霞は加納と胤彦の母との不義の子と考えられてきたが、実は胤彦と母との子かもしれないと。それは加納のナマの感情のほとばしりを見たいためだった。「マガビー」他に掲載された作品を集めた短編集。

番人 (ビーボーイコミックス)
番人 (ビーボーイコミックス) 国枝 彩香

リブレ出版  2007-10-10
売り上げランキング :
おすすめ平均star


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 シリアス作品では、表題作「番人」、「Show Me Heaven」、「空の裏側」が収録されています。どの作品も展開がヒジョーに巧みですね。「番人」では、死んでしまった胤彦の視点から物語が語られます。「空の裏側」では、10年前、好きな人がレイプされている場に居合わせた主人公が、ゆっくりその傷を自分の中に取り込んでいく物語です。どの作品も展開は一本道ではありません。登場人物たちの気持ちは素直には表現されず、回りくどかったり、時には相手を傷つけるような形で現れます。そのため登場人物たちの間には衝突が生まれます。ですが根本にあるのは愛です。愛しているから回り道をする、愛しているから傷つけるのです。ハッピーエンドにならない作品もありますが、それは愛のため。ラブという根っこは実にしっかりしています。そのためやきもき、ハラハラしながら、痛々しいラブを楽しむ構造になっています(だからこそBLっぽくないという意見もありますが)。いやー、やっぱり国枝先生はマンガが上手。ベテランのワザに翻弄される楽しさがあります。
 そしてもう一つ、ヒリヒリするような男の欲望が描かれるのですね。「番人」では、胤彦は加納の本当の情動を見てみたいと渇望しています。「空の裏側」では、レイプに伴う残虐な欲望、認めたくないけれど確かに存在する加虐性が描かれます。これは男性にも理解できるものですね。確かに女性が想像して描いているなという印象はありますが、そこは名手・国枝。わざとらしさやインチキ臭さが伝わるような展開にはなりません。その強い心の動きは、物語の振幅を強めますが、男性への衝撃力も持っています。

 とまあいろいろ書いてきましたが、この本にはものすごい問題作が収録されています。「めぐり逢い…COSMO」です。

 宇宙世紀801x年。地球連邦と独立軍の戦いは激しさを増していた。地球連邦のエースはコールタール艦長。彼は自他共に認めるぶさいくだったが、心根のやさしさと優れた戦果で一目置かれていたのだ。ある日コールタールは独立軍の捕虜を捕らえる。それは美形の兄によく似た青年だった。

 えーと、銀英伝とかそういうのを想像すると足下をすくわれることになります。なんたってB-Boy Phoenix「不細工特集」に収録された作品ですから!
 特筆すべきは毛へのこだわりでしょう。髪の毛うねるうねる。ぶさいくなんで衝撃力ありまくりです。胸毛腹毛指毛腕毛描かれまくりです。そして一番のこだわりは鼻毛。全てのコールタール艦長の顔にはご丁寧に鼻毛が描かれています…一コマの例外もなく! 国枝先生が超ノリノリで描いていることがビリビリ伝わってきます。もともと国枝彩香はギャグっぽい表現も得意としてきましたが、いざ本気となるとえらい破壊力。漫画の上手さがギャグでも遺憾なく発揮されるのでした。
 シリアス作品も面白いんですが、この作品だけでも間違いなく買う価値があります。一冊で二回楽しめる、お得な作品集といえましょう。

トラックバック先
オレのやおいさんに手を出すな! さん
BL系。さん
こんな本よみました… さん
霖雨の彼方 さん

リブレ出版
2007年10月10日発行
2007年10月10日購入

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年9月 7日 (金)

天城れの「獣耳商事」

獣耳商事 (Dariaコミックス) 獣耳商事 (Dariaコミックス)
天城 れの

フロンティアワークス  2007-08-22
売り上げランキング :

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 獣耳商事(けもみみしょうじ)は、人間に役立つ愛玩動物を人化させ、依頼主に派遣する企業。依頼主はペットとして社員を扱えばよい。そして依頼主は必要ならば、社員を身請けして永久就職させることもできる。
 傾きかけた典男のデザイン会社にやってきたのは、長身でスーツが似合うウサギ、稲葉だった。人当たりの良さと高い能力で、稲葉はすぐに会社の人気者になり、会社の成績も上がる。自分は必要とされていないと思い、典男はみじめな思いをする。稲葉を置いてひとり出張に行ってしまう典男。ところがウサギは寂しがりや。残された稲葉はシオシオになってしまう。神社の巫女(でも当然男)とセックスするとどんな恋でもかなう! という設定の「コイミコ」も収録された短編集。

 お話そのものは実に真っ当なお仕事ものBLです。すねちゃった典男と稲葉の距離は一時的に離れてしまいます。ですがその距離が、二人の切り離せない思いをはっきりさせます。「やっぱりお前と離れることはできない」と。結局典男と稲葉は無事結ばれて、めでたしめでたしとなります。うんうん、いい話です。それからネコミミやウサミミのキャラが出てきて、主人公と恋愛関係になるっていうのもよくある話です。この作品でもカワイイネコミミキャラや犬耳キャラやウサミミキャラが出てきます。そしてそれが上手く物語に絡んできます。
 とまあ、お仕事ものとしてみても、ケモ耳ものとしてみても、実に真っ当な作品になっているといえるでしょう。ですがケモ耳キャラがお仕事をするようになると…しかもスーツをバッチリ着こなしてとなると…とたんにヘンテコな雰囲気がかもし出されるのです。すっごい優秀なリーマンなのにウサミミです。最高の執事なのに犬耳です。お話が真っ当なのでごまかされてしまいそうになりますが、ちょっと待ってください。異様な存在がそこに紛れているではないですか。ウサミミが! ネコミミが! 犬耳が! だんだん変な気分になってくるんですよ。自分の常識は大丈夫だろうかって。

 天城れのといえば、変な要素を無理矢理つなぎ合わせたBLを得意としてきました。そして見るからにオバカな展開を得意としてきました。この作品はそうした直球勝負のオバカっぷりは影を潜めています。ですがバカさは健在で、ジワジワくるオバカさへと変化しています。やっぱり天城れのは天城れのだな、と安心したのでした。

 そしてこの「ジワジワっぷり」は、お話作りに大きく拠っていることを忘れてはなりません。お話がちゃんとしたラブストーリーになっているので、ウサミミ、ネコミミが見えにくくなっているのです。なので今後は、バカ要素を一切抜いた作品で勝負しても面白んじゃないかな、と思いますね。

トラックバック先
霖雨の彼方さん
BL STUDYさん

フロンティアワークス
2007年8月20日発行
2007年8月26日購入

| | コメント (0) | トラックバック (2)

2007年8月 8日 (水)

山田参助「山田参助の無駄な抵抗やめましょう」

山田参助の無駄な抵抗やめましょう (オークラコミックス) 山田参助の無駄な抵抗やめましょう (オークラコミックス)
山田 参助

オークラ出版  2007-07-12
売り上げランキング :
おすすめ平均 

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 渋崎健の表の顔は演歌歌手。しかし裏では「泣かせ屋の健」として知られていた。健にやられた男は、もう健のチンポなしではいられなくなってしまうのだ。西にチンポ狩りの暴漢が出れば退治しに行き、東にリストラされたオヤジがいれば抱いてやり。男・シブケンは今日も行く。「若さでムンムン」に続く山田参助2冊目の単行本。

 先日ロフトで行なわれた「眼鏡茶屋」でご一緒した参助先生。いやまあ「ムンムン」の頃から大ファンですから緊張したのですが、いざお会いしてみると参助先生自身も激萌えなんですね。丸眼鏡に和服の丁稚ルックなんですから。加えてトークが濃い濃い! 左門豊作を取り上げておられたのですが、これがまあ実にいい眼鏡なんですわ。眼鏡キャラの最大の特徴ともいうべきコンプレックスがあって、それがダダ漏れになっているんですね。眼鏡キャラは本心をあんまり見せないように眼鏡をかけてることが多いんですが、左門は実に脇が甘いんです。それを見つけてくる参助先生の「目の良さ」にシビレルところですね。帰り際に原画も頂きましたし! これから眼鏡書生は来ますよ、ホントに。

 で、作品なんですが、「さぶ」や「サムソン」といったゲイ雑誌に収録された作品が中心です。これが実に細やかなんですね。「男が感じる男のエロさ」「オヤジのエロさ」というものは、実はちょっとだぶついた肉とか微妙な表情とかヒゲのそり残しとかなどの細かい部分に現れると思うのですが、それをいちいち抜き出してきているのですね。イラストにそれは端的に表れているのですが、漫画にもそこここに現れます。
 それにBLっぽい作品もあります。同じアパートに住む男子二人が、ケジラミをうつされたせいで急接近するという「オソリソリ」なんか実にBLですね。聞くとゲイ漫画の中ではBLに近い感性を持っているといわれているそうで。
 そしてなんといっても山田参助の優れている点は、男のかわいさと詩情を描けることでしょう。それは「甘い生活」に非常によく表れています。

 クリスマスの晩、漫画家の一郎先生(29)は、戯れに自分の履いていた靴下を枕元に置いてみる。朝目が覚めてみると、靴下の中には手のひらサイズの、でぶの五分刈り青年が入っていた。青年は粟津虎吉と名乗る。とてとて走り回るアワヅに、先生は段ボールでお家を造ってやり、二人の奇妙な共同生活が始まる。先生の消しゴム掛けを手伝ったり、お嫁さんとしてリカちゃん人形を買ってもらったり、エロい遊びをしてみたりするアワヅ。ある日先生はアワヅに「お前はどこからなんのためにやってきたんだろうねえ」と尋ねようとするが、先生はそのことばを飲み込む。なぜなら尋ねたとたん、粟津が雪のように消えてしまうように思ったから。久しぶりに一緒に寝よう、と先生は提案する。

96dpi  という作品なのですが、これがまあかわいいんですよ。アワヅは小動物扱いですが、実際とってもかわいいんですね。しかも純情ですし。普段はそれを感じさせないように振る舞っていますから見えにくいのですが、実際の男も結構かわいいところがあります。それを極端な形で描いたのがアワヅだといえるでしょう。そしてこの展開! 今は安定している二人の関係も、いつか壊れてしまうかもしれない。周りの状況が許さなくなるかもしれない。同性を好きになる、同性がかけがえのない存在になるということは、そうした不安を秘めるものです。異性の関係でもその不安はありますが、同性の方がより強くなるでしょう。一郎先生が感じているのは、その不安は分かってる。幸せは壊れやすいかもしれない。でも今はこの幸せに浸っていたいという思いなんだと思います。な、なんとリリカルな! そしてこの幸せと悲しみがごっちゃになったような複雑な思いは、BL好きの女性にも強くアピールするんじゃないかと思います。ゲイ漫画のレーベルではなくて、BLのレーベルから出るのは、こういう理由なのかと思いましたね。

 厳密に分類するならゲイ漫画なんでしょうが、内容はBLに通じるというか、もろBLな作品もあります。なのでぜひ多くの女性に読んでほしいところですね。そしてこれまでBLやゲイ漫画を読まなかった人にも読んでほしい作品ですね。なんたって普遍的な面白さがありますから。さて、サインもらって来ようっと。

オークラ出版
2007年8月12日発行
2007年7月12日購入

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2007年5月11日 (金)

野垣スズメ「迷走バカップル」

迷走バカップル 迷走バカップル
野垣 スズメ

オークラ出版  2006-07-12
売り上げランキング :
おすすめ平均 

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 政巳と尚は、女性には苦労しないルックスを持ったイケメン。女性に走るのもつまらないので、二人でセフレの関係になっていた。政巳は尚からセフレの関係を解消しようと告げられる。別に平気と思う政巳だが、なぜか食欲がない。そして尚が女性と歩いているのを見たとき、それまで感じたことのない感情を覚える。今まで恋愛に苦労したことなどなかったので、初めてジェラシーを感じたのだ。なんとか尚とよりを戻そうとする政巳。街で女性が「男は手料理に感動するものよねー」としゃべっているのを聞き、一念発起して尚のために肉じゃがを作り始める。休刊した「BasiL」に掲載された作品を中心に集めた作品集。

 最初はイケメン二人の「春を抱いていた」みたいなラブアフェアが描かれるのかな? と思いましたね。「女に不自由したことないオレがヤキモチなんて」って描き方ですから。ですがお話は変な方向へ展開していきます。町の女性の話を聞いたとたん、政巳は尚の世話を焼くことに必死になり、いつか奥さんのようにかいがいしく世話を焼くことにあくなき情熱を燃やすようになるのです。さっきまでハンティングタイプのイケメンだったのに! 「女なんて」という姿勢を隠そうともしなかったのに! そして行動は極端にオトメになります。帰ってきた尚を三つ指ついて迎え、「お風呂にする?ご飯にする?それとも…」とか言っちゃったりします。ちょっとぎくしゃくした二人の関係を修復しようと、おまじない(小学生の妹から取りあげた本で勉強)に頼ったりします。服装はエプロンを着ることが異様に多くなります。き、君のアタマは大丈夫ですかー!

 極端な乙女受は、萎えにつながりやすいものです。男として設定されているはずの受が、女の子と変わらなくなってしまうのですから。あるいは女でもなく男でもなく、ただ「受」としか呼びようがないヘンテコな生物、「性別受」へと変化する場合もあります。ボーイズラブは攻も受も形式的に男性ジェンダーをまとっているから、それをずらす面白さが生まれるのですが、乙女受はそのジェンダーのずらしを台無しにしてしまう可能性を持っているのですね。
 で、この作品の場合はどうかといいますと、徹底的に受をオバカにすることによって、オトメ受を変な生物にしてしまう危険を回避しています。「バカだ…」と読み手はあきれるわけですが、そのことが受を「こっち側」にとどめるのですね。そしてそこから萌えどころも発生します。ほら、バカな子ほど可愛いっていうじゃないですか。えもいわれぬかわいらしさが全体から発生し、ほっこりとした気分になるのです。

 コミティアなどでリリカルな非BL作品を発表していた野垣スズメ。その頃から綺麗ですっきりした線に惹かれていました。それがあるとき突如BLを描くようになったのですね。それもこれまでのリリカルな作品とは大きく異なった、オバカなバカップル作品だったのです。その後めでたくBL誌でデビューし、最初にまとまったのがこの作品集です。いやー、やっぱり同人時代から注目していた作家の初単行本は嬉しいですね。そして内容もオバカで可愛く、この先どうなるか楽しみなもの。嬉しくなってしまうではないですか。今後も注目していきたい作家ですね。

オークラ出版
2006年8月12日発行
2006年7月12日購入

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年5月 4日 (金)

野垣スズメ「バカバカゴシップ」

バカバカゴシップバカバカゴシップ
野垣 スズメ

オークラ出版 2007-04-12
売り上げランキング :

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 長身メガネスーツのレイは、若手タレントのナルミのマネージャーになる。必殺技は「俺にもみ消せないゴシップはない」。後先考えないで女に手を出すナルミのゴシップをもみ消すことが大きな仕事となる。ところがレイは最初からオバカなナルミに萌えまくり。いつか喰ってやろうと虎視眈々と狙う。冷たい感じのするレイに対して、最初はツンケンしているナルミだけれど、大好きなくまちゃんケーキを与えるととたんになつき、心を許すようになる。そんなときナルミの仕事はあまりうまく行かなくなる。結婚して引退しようか、というナルミに対して、とうとうレイの堪忍袋の緒が切れる。同人誌で発表された作品を集めた作品集。

 いやーオバカです。ナルミは名実ともに見事なお馬鹿さん。なんたって九九もできないですし、大好物のくまちゃんケーキ(…)さえ与えていればご機嫌という、ハムスター並みの精神構造です。一方レイもたいがいお馬鹿さん。見た目はスーツにメガネなんで大人なのかと思えば、ことナルミとの関係ではお子様並みの意地を張りまくります。女性タレントと話していると、すぐすねちゃったりとか。そして頭の中にあるのはセックスのことばっかりです。大人げねー! 本文中では「デリカシーなし攻×バカ犬受」と説明されていますが、なんのことはない、オバカ攻×オバカ受なんですね。バカバカです。
Photo_22  バカだったら読む価値ないんじゃないの? と思う人もいるかもしれませんが、ほらそこは「バカな子ほど可愛い」っていうじゃないですか。ナルミのかわいさはまさに小動物なみ。クマちゃんケーキを前にして目を輝かせるナルミはえれえカワイイのです。それにレイのほうも怒ったり、すねたり、ハァハァしたりと表情豊か。読んでいて頬がほころんでくるのがよく分かりますね。ナルミみたいな動物は飼うのは大変ですが、癒し力は相当なもの。一匹飼ってみたいものですなぁ。レイの気持ちが分かりますなぁ。くふぅ。

 この人は一度漫画をやめ、ふっきれてバカを描くようになった結果、デビューすることができたとのこと。デビュー後の作品が『煩悩☆バカップル』になります(後ほどレビューする予定です)。その選択は正解ですね。確かにコミティアで以前売っていたリリカルな作品もとてもよかったんですが、漫画としての衝撃力はオバカ作品の方が上です。それになんといっても楽しく描いているのがひしひしと伝わってきますしね。この人の「生命の波長」に、こういうオバカさが合っているのだと思います。それに線のキレイさと色づかいの美しさは相当なもの。作品の幅を広げていくためには、別の描き方や別のテーマにも取り組んでいく必要があるとも思いますが、徹底的にオバカな男たちを描いていくのもありといえるでしょう。今後どうなっていくか、楽しみな作家です。

オークラ出版
2007年5月12日発行
2007年4月23日購入

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年4月 5日 (木)

SHOOWA「Nobody Knows」

Nobody Knows Nobody Knows
SHOOWA

芳文社  2007-03-29
売り上げランキング :
おすすめ平均 

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 モドルの仕事は精巧な人形のメンテナンスをすること。その人形はきわめて精巧で、ほとんど人間と変わらないし、会話をすることもできる。モドルと一緒に仕事をするのは寡黙なススム。普段は互いに関わらないように仕事を進めていくが、ススムが一体の人形に執着したことをきっかけに、関係は変化していく。モドルはススムの人間性に興味を持ち始め、ススムの仕事がとても優しいことに気づく。人形の局部をていねいに浄めるススムに、「なんかやらしーなってさー」と告げるモドル。それに対してススムは、「どうせなら生身の人間としてみたい」と応え、モドルを抱きしめる。リリカルな表題作「Nobody Knows」の他、焼鳥屋「風来」に集まる男たちのいろんな関係を描いた作品を集めた作品集。

 お? 絵柄としてはなかなか良い感じのニューウェーブじゃない? ちょっと線がまだおぼつかないところがあるけれど、この人なりの味があるじゃん? え?この作品こんなどんでん返しがあるの? え?そういうオチだったの? すごいじゃん、この作品!

 とまあ表題作の「Nobody Knows」のリリカルっぷりにはすっかりヤラレテしまったのでした。少しずつ近づく二人の間隔もいいですし、現代文明批判につながるような展開もいいんですね。これはとんでもない文芸的な作品が現れたぞ、と思ったのです。ところが…

Shoowanobody_knows_1 裏筋太郎は漁師。浜辺で集団で男色に耽っている亀を見かけ、一番下になっていた亀を助ける。瀕死の亀だが、裏筋太郎が悲しみのあまり涙を流すと、美しい男の姿になる。その美しさに打たれた太郎は、自分の亀の高ぶりを押さえることができない。それを見た亀は、亀の亀を太郎の亀にすりあわせる。

 …って、なんじゃこりゃー! 他の現代を舞台にした作品もおおむねこんな感じで、基本的に頭のネジが数本飛んだ感じになってます。ギャグの破壊力がすさまじいんですよ、これが。ギャグが魂からにじみ出て来る感じなんですね。シリアスな展開にしようと試みてはいますし、そのためBL部分はよくできています。ですがそのにじみ出てくるギャグによって、作品の雰囲気が非常に独特なものになっているのです。たとえていうなら、西田東の単行本の巻末にあるあとがき(強烈なギャグ)を培養して、単行本全体にちりばめているような感じでしょうか。

 そう説明していくと「ちぐはぐな作品なのか」と思えるかもしれませんが、この人の場合はそんなことはありません。ギャグの部分と恋愛を語る部分とが、実に上手くくっついていて、違和感を感じないのです。ですから「なんじゃこりゃー!」と笑ったすぐ次の瞬間、キュンと萌えが走るという内容になっているのです。これはなかなかできるこっちゃないですよ。ものすごいバランス感覚、ものすごいギャグのセンス、ものすごい才能を感じます。

 またもBLに「ぐゎつーん(岩鬼のスイングのように)」と来る作家が現れたのでした。帯の「業界騒然!!」というアオリは嘘じゃありません。西田東や松山花子がクリエイターズ・クリエイターであるように、この人もそうなっていくでしょう。こういう力のある作家に出会えるので、やっぱりBLあさりはやめられねえですな。

芳文社
2007年4月15日発行
2007年4月3日購入

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2007年4月 4日 (水)

天童まひる「魔人倶楽部」

魔人倶楽部 (GUSH COMICS)魔人倶楽部 (GUSH COMICS)
天堂 まひる

海王社 2007-03-10
売り上げランキング :

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 摩利也はそのへんをさまよう霊にものすごく取り憑かれやすい霊媒体質の男の子。その体質を利用して、創摩先輩は除霊のクラブ活動をしている。倶楽部の名前は通称「魔人クラブ」。摩利也に霊を取り憑かせえっちなことをし、摩利也が昇天すると霊もまた昇天するのだ。気持ちは良いんだけれど、摩利也は毎回切なさを感じている。創摩先輩が触ってくれるのは、だれかが憑依しているときだけ。摩利也本人の時には触ってくれないのだ。満たされない思いを抱えた摩利也の心の隙を突いて、邪悪な霊がのりうつる。「Chips!」などに掲載された作品を集めたもの。

 やっぱり天童まひるの絵はかわいくていいですなあ。受のマインドが随分とオトメなので、かわいさは加速します。摩利也は「どうしてセンパイはボクをさわってくれないの」とか思っちゃいますし、失恋を癒すために女装してホストクラブに連れて行かれる男の子は、ホストにきゅんと惚れてしまいます。「そんな男いねえ」なんてツッコミはヤボヤボ。ありえないから良いんじゃないですか。たしかにこういうオトメ受は現実にはほとんど存在しないので、不思議なキャラクターではあります。ですが男性にとってもかなりヅキュンと来るのは確かです。確かに「男の子なのにこんなにかわいくていいの?」という意外性もありますが、ですが実際の男の子にもかわいいところはあるもの。オトメ受というのは、そうした男の子の可愛さを誇張した存在なんだと思います。女の子の可愛さに萌えるのと同様、男の子の可愛さに萌えることも十分に可能なんですね。

Kirio  そしてこのところの天童作品に顕著なことは、「受の骨格が男っぽい」ことですね。例えばメイド服を着て喫茶店でバイトする来利緒きゅん。男の子にしては細っこいですが、肩幅やぺたんこな胸など、男性の骨格をかなり意識して描いていることが分かります。そしてキャラの性格も、かなり男性らしさを意識していますね。この来利緒きゅんは、最初は雇い主のマスターのことを「だれがあんなコンニャク男に惚れるかよっ」とか言っています。そうそうそれそれ。男ってものはそうやって意地を張ってしまうものです。ところが、客に指摘されたり男の客に迫られたりするうちに、「オレマスターが好きなんだ」と自分の本当の心に気づきます。男というものは体面を重んじるあまり、意地を張って自分の本心にさえ嘘をつくもの。そこを分かっているところが良いんですね。そこは男性にも共感できるところです。ところが自分の本心に気づいたあとは極端にオトメ化するんですね。このギャップ! 確かにリアルじゃないかもしれませんが、意地を張るからこそ、そのオトメっぷりが生きてくるわけです。
 そしてオトメになった男の子が繰り広げる恋愛は、かなり甘くてキュンキュンくるもの。流星ひかるが描くような「男少女まんが」(女性よりもむしろ男性を悶えさせるタイプの恋愛まんが)になっているのですね。これはキキます!

 以前の作品のようなロリショタっぷりは影を潜めていますが、男らしい属性を結構持ったキャラがオトメ化していくのですから、かなりの衝撃力を持っています。そして男性に訴える要素も強く持っています。男性がBLに「入門」するときの一冊に向いた作品といえるでしょう。

海王社
2007年3月20日発行
2007年3月17日購入

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年3月25日 (日)

ホームラン・拳「仲神家の一族 ~悪魔来る~」

仲神家の一族悪魔来る 仲神家の一族悪魔来る
ホームラン・拳

リブレ出版  2007-03-10
売り上げランキング :
おすすめ平均 

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 とんでもない家族に囲まれながら、少しずつ関係を深めていく朱鷺緒(ときお)と永(はるか)。そんなとき、一族のひばりが仲神家を訪れる。ひばりは仲神家の本家の事業を継いでいて、少し疎遠になっていたのだ。そして以前朱鷺緒はひばりにあこがれとも恋心ともいえる気持ちを抱いていた。久しぶりだからということで、ひばりは朱鷺緒を食事に誘う。端から見るとあからさまなひばりの誘いだが、朱鷺緒は昔の思いがあるため、まんざらじゃなさそうな様子。ひばりの悪魔的なほほえみに、永は気が気じゃなくなってくる。「仲神家の一族」の第2巻。

 「悪魔来る」のサブタイ通り、ひばりが実にいいキャラなんですね。社会人としては超エリートで、人当たりもよい。ですが外見の良さとは逆に、よほどのことがない限り本心を見せず、目的のためには手段を選ばないところがあります。恋愛に関してもカムフラージュがきつく、朱鷺緒狙いかと思いきや、実は永狙いのようなそぶりをして、でも実はそれもカムフラージュです。こういうキャラは描くのが難しいのですが、ホームラン・拳先生はキチンと描いています。たいしたものです。そしていつも見えているのは悪魔的な面なんですが、実は恋愛に関してはバッチリ一途です。なのでひばりは憎めないキャラ、むしろ好感度の高いキャラになっているのですね。BLにおいて重要なのは一途な思い、つまりは純愛なのでありまして、それについては抜かりなくガッチリ描き出しています。

 この作品集にはもう一編、時夫の弟・鷹丸が主人公になる話が収録されています。海賊の財宝伝説がある島で、鷹丸と島の青年・雪(きよし)が、島の秘密をめぐる陰謀に巻き込まれていくというものです。ミステリタッチになっていてこれがまた楽しめるのですね。あくまで「タッチ」なので、肩肘張らずに読めるのもよいですし、何より鷹丸と雪の恋愛関係が良いんですね。それに鷹丸を探しに来たひばりと、ひばりの思い人との関係も、わずかに近づいていきます。様々な手を使って、全体の物語を進めているところが面白く感じます。

 まあ最初のカポーである朱鷺緒と永の関係はなかなか進まないのですが、一癖も二癖もある仲神家の一族たちが、がちゃがちゃ騒動を繰り広げて行くだけでも面白いというものです。シリーズも続いていきそうな感じですしね。肩の凝らないライトなシリーズとして、これはこれで続けてもらいたいものだと思います。

リブレ出版
2007年3月10日発行
2007年3月20日購入

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年3月24日 (土)

ホームラン・拳「仲神家の一族」

仲神家の一族 (ビーボーイコミックス) 仲神家の一族 (ビーボーイコミックス)
ホームラン・拳

リブレ出版  2007-03-01
売り上げランキング :
おすすめ平均 

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 飯島永(はるか)は高校生。超童顔メガネの数学教師・仲神朱鷺緒(ときお)先生とひそかにつきあっている。数学の補習をするという名目で、永は仲神家に招かれる。離れでラブラブしようという魂胆の永だが、朱鷺緒の家は超豪邸だった。しかも出てくる家族はみんな特殊。母親は日本人形のような幼さだし、少女漫画家の兄はゴージャスな女装をしているし(胸あり)、父親は妙に若々しい儚い系。そして共通しているのは、全員が重度の朱鷺緒萌えであること。家族たちに視姦されまくる二人の未来はどっちだ?「仲神家の一族」シリーズに短編3本を加えたもの。今回紹介するのはビブロス版。

 まんがのいいところは「そんなんあるかー!」という設定を、平気で描くことができることです。なんたって絵ですから! しかもお金はほとんどかかりません。そこが3次元表現との違いでしょう。思えば映画やアニメは、まんがに描かれるとんでもない描写を映像化するために、ものすごい努力をしてきました。CGの普及と低廉化によってそれは比較的楽になりましたが(『少林サッカー』なんかが良い例ですね)、それでもまんがの持つとんでもなさを写しきることは難しいことです(『逆境ナイン』や『地獄甲子園』が良い例ですね)。まんがというのは本当に自由度が高く、想像力に直結している表現手段だといえるでしょう。

 そして「なんでも描ける」ということは、破壊力の高いギャグにもなるということです。仲神家の一族、もうみんなやばすぎです。女装していないときの兄は無精髭の青年ですが、女装するとなぜか胸がつきます。えーと、そのおっぱいはどういう仕組みになっているんでしょうか? 「女装の腕はまさにイリュージョン」と説明してありますが…それ説明になってないって! それにおじいちゃんがすごいんです。「それなんて荒木飛呂彦?」どころの騒ぎじゃなく、「それなんてジルベール?」って具合ですから。それに家族全員が朱鷺緒の可愛さに病的にハァハァしています。24時間監視していたり、フィギュア作ったりしてますから。ホームラン・拳先生といえば、『僕は君の鳥になりたい。』や『喜鬼』など、深刻なお話も得意としていますが、ギャグもきわめて上手だったのですね。引き出し多いです。
 それに絵柄の美麗さは相変わらずです。朱鷺緒先生自体ヤバスギです。25歳にしてカワイイメガネですから! ゴスロリ服とか似合っちゃいますから! 学ランとか超似合いますから! 白衣とか野球のユニフォームとかコスプレしまくりですから! 酔っぱらってあどけない顔で寝ちゃいますから! こんなにカワユイ25歳なら、もう全然大丈夫(何が)っすよ! むしろ私にもこんな人を授けてください、神様!
 …おっと、ハァハァしすぎてしまったようですね。もともと私はホームラン・拳先生の受け子さんにはマジでキュンキュンしているのですが、それだけ絵の美麗さと訴求力が大きいということです。男性にとってもこの美しさ/かわいさはヤバイくらいの魅力を持っています。

 永と朱鷺緒のなれそめや関係の深まりもちゃんと描かれているので、BLとしてもちゃんとしています。ただこの作品のポイントは、まんがという表現の特質を存分に活用して、BLの特徴である「とんでもなさ」を上手く<誇張>していることにあると思います。この<誇張>は少年まんがによく見られましたが(それを意図的にやっているのが島本和彦でしょう)、BLでも<誇張>は有効なのです。まあまんがですから当たり前なのですが。BLはギャグと非常に親和性が高いのですが、その理由はこの<誇張>にあるのではないかと思いましたね。

 ホームラン・拳先生の作品が連続して出ましたので、連続してレビューしたいと思います。原動力は萌えです!!

ビブロス
2005年7月10日発行
2007年2月15日購入

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年2月25日 (日)

天城れの「男恋」

Photo_4  鉄男は番空高校に入学したてのカワイイ系の一年生。無難に高校生活を送ろうと思っていたが、入学早々コワモテの男に「俺とつきあえ」と迫られる。あまりの迫力に流される鉄男だが、男は番空高校で知らぬものとてない、泣く子も黙る応援団長の竜司だったのだ。鉄男は地獄のシゴキを覚悟する。しかし竜司は鉄男と一緒に帰ろうとして、おそるおそる手をつなごうとしてくる。「つきあえ」と言ったのは、「交際してくれ」という意味だったのだ。漢力では誰にも負けないが恋愛には不器用な竜司と、鉄男の恋愛の行方はどっちだ? このほか応援団のメンバーであるクール系双子の恋、途中参加のツンデレ忍者の恋を描いた連作。

P29  キタキタキター! BLの枠組みを維持しながらヘンテコな要素をさりげなく取り入れてきた天城れの。とうとうヘンテコな要素の方を前面に出してきましたよ。なんたってこのキレイキレイした絵柄で応援団ですから! バンカラ漢と言えば「学ランなんて洗ったことねえ」みたいな「身なりにかまわない」印象がありますが、この作品の男たちにはものすごい清潔感があります。なんたってBLですから! そして応援団のメンバーは皆「男の中の男」を目指しますが、なんだかピュアな片思いや恋の駆け引きをやったりします。なんたってBLですから! そしてそもそも現代には死滅した応援団という存在を、さも当たり前のようにさらっと描いています。なんたってBLですから! いやーBLってすごいです。BLの枠組みにさえちゃんと従っていれば、取りあげる題材はなんだっていいんですから。
 この作品は、冷静に考えればブキミな領域に達していると言えるかもしれません。そもそもこの世の中で応援団を描こうとすること自体「大丈夫?頭?」と問いたくなってしまいます。そして絵柄はバンカラとは正反対の宇宙に属しているかのようなキレイさですし、繰り広げられるのは男どうしの甘い恋愛です。これまで私たちの文化に蓄積されてきた「バンカラ」のイメージや「応援団」のイメージとは、何一つ合致しないのです。正直最初に見た人はとまどうでしょう。「バンカラですよー硬派ですよー」と言葉では書いてあるのですが、絵柄や展開はそれとは全く違う方向に向かっていくのですから。ブキミというよりシュールかもしれませんね。シニフィアンとシニフィエがめちゃめちゃ乖離していると言うんでしょうか、描こうとする内容とアイコンがかけ離れきっているのですから。ですからこの作品はすさまじい破壊力を持ちます。「なんじゃこりゃ!」という強いインパクトを持っているのですね。いやー、BLの魅力はとんでもない作品にありということは分かり切っていたのですが、ここにまたとんでもない金字塔が現れたのでした。と学会の人とかは早急に読まなきゃダメですよ、この本。

 BLとして見たときにもしっかりした構造を持っていることを忘れてはなりません。鉄男と竜司は障害を乗り越えてラブラブになりますし、他のカポーも同様です。ですがこの作品はやはり「BLの多様さ」「作品ジャンルとしてのBLのポテンシャル」を示すいい例として読むのが適切ではないかと思います。多様な表現が許されるからこそ、旺盛な需要があって供給量を増やさねばならないからこそ、こうしたとんでもなくヘンテコな作品が現れるのですね。そしてこの多様さは、駄作も生むのでしょうが、その中から確実に名作を生み出していきます。この作品も当然記憶にイヤでもバッチリ残る大名作なわけです。漫画史、BL史のなかでも、記憶されるにふさわしい単行本といえるでしょう。

角川書店
2006年12月26日発行
2006年12月22日購入

男恋
天城 れの著

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年2月17日 (土)

天城れの「玄人童貞」

Photo_2  中2の和彦は、女性経験が豊富でみんなの人気の的。今日も男子たちから女性の扱い方についての相談を受けている。しかし実は全部はったり。アソコを見るだけで吐いてしまうほどなのだ。そんな和彦は彼女持ちの小峰にライバル意識を持っている。和彦のことをいつもくだらない、という目で見るからだ。努力する和彦だが、余裕のある小峰の態度にかなわない。しかしふと触れた小峰の手に、和彦はゾクゾクしてしまう。「Chips!」などに連載された作品を集めた短編集。

 まったくなにが面白いかって、キャラ設定のヒネリが効いているところですよ。和彦は意地っ張りで虚言癖の持ち主ですが、白髪でかわいい美少年。そして心に弱さを抱えているので、嘘がばれるとうわーんと泣き出してしまいます。その辺の弱さがたまんなくいいんですね。自分にも心当たりのある弱さですし、ついつい背伸びしたくなってしまいますから。そしてめでたくボーイズラブ関係になるんですが、芯が意地っ張りなので、単なる受け受けしい受ではすまないところを発揮します。いやー、意地っ張りってのは可愛くていいですな!

P66  そしてこの作品集にはもう一つ問題作があります。荒廃した私立悪の華高校(…間…)に本格的な教育を施すべく、一人の最終兵器的男性教師が派遣された。その名もイメクラ先生。男子高校生のリビドーを直撃するコスプレをすることによって、勉強に興味を失った生徒たちのやる気を取り戻そうというのだ。しかしイメクラ先生の工夫に全く興味を惹かれない生徒がひとりだけいた…という「イメクラ先生」です。イメクラ衣裳の協力は「青春男子手芸クラブ」のメガネだそうで。
 ………(間)………。えーと、そういう先生はどこの惑星に………って、ツッコミを入れるのはやめましょう。むしろ知りたくなるのは、どういう思考過程を経ればこのようなネタが思いつくのか、ということです。まさにBLの王道「予想をはるかにすっ飛ばした超展開」ではないですか! ここまですっ飛んだ展開を見せる大馬鹿作品は久しぶりです。しかしそれでもちゃんとBLにはなっているんですね。やっぱりこのさじ加減の絶妙っぷりにはうならされるところです。

 さてさて、まだまだ天城れのをレビューしていきますよ!

海王社
2006年5月20日発行
2007年2月8日購入

玄人童貞
天城 れの

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年2月10日 (土)

天城れの「青春男子手芸クラブ」

Photo_1  清順男子高校には特別な部活があった。「手芸界の貴公子」と呼ばれる黒衣を部長とする手芸部だ。副部長は大富豪の御曹司で特技はテディベア。極道の息子の特技はレース編み。学年トップの頭脳の持ち主の特技はコスプレ衣装。野球部と兼部しているエースの特技はパッチワーク。それぞれ一流の特技を求められる部活なのだ。そこにひょんなことから、転入生の松田は入部してしまう。背が高くてメガネの松田はバレーボールの選手だったが、怪我でバレーの道をあきらめていたのだ。全く手芸経験のない松田に、何かひとつプロフェッショナルな技術を身につけることを求める黒衣。しかし松田はあきらめない。黒衣部長を好きになってしまったし、なにより彼は生粋のアタッカーだったのだから。天城れの3冊目の単行本。

 急いで本屋に走って、過去の作品も買ってきましたよ。
 えーっとこれなんてホスト部? というオハナシですね。手芸部部員はみんなキラキラしてますし、キャラ立ってますし、特技持ってますし。ハルヒに当たるのは黒衣部長ですね。姫扱いですから。このように構造的にホスト部そっくりですから、内容も白泉社漫画的になっていきそうなものですが…キャラの抱える欠落やら心の傷やらが松田の参入によって癒されるとかになりそうですが…当然そんなことはありません。なんたってBLですから! ヘタレ攻めの松田がどうやって女王受けの黒衣を落としていくかがポイントになってきます。そしてその展開がふるっているわけですよ、学園祭恒例の女装コンテストがあって、黒衣がウェディングドレス姿になるのですから。同じく女装コンテストに出場するライバルがいて、ライバルが手芸部の活動を妨害しようとして騒動が起こった結果、黒衣と松田が結ばれるという展開になるのですが、このライバルが「これなんてロリっ子?」とつぶやきたくなる性別受なんですね。いやー、やっぱりBLで大切なのは想像の斜め上をすっ飛んでいく展開だなあとしみじみ思いますね。ただ展開こそ大笑いではありますが、BLの基本線は絶対に外さないので、安心して読めます。

P141  それから番外編の、極道の坊っちゃんのお話がまたすっ飛んでいてスバラシイんですね。ぼん(=坊っちゃん)は組の連中に慕われていて、彼らが最も望んでいるのはぼんの編んだレース。もんもんを背負った極道たちがレースを身にまとってハァハァしている様は、強烈な衝撃力を持っています。加えてぼんのボディガードは元パティシエで、手芸部に毎日心のこもったおやつを差し入れてくれます。極道の作ったおやつ…。「極道」と「おやつ」という言葉の組み合わせには、ミシンとこうもり傘以上のシュールさが含まれていないでしょうか? とまあ基本的に美形な顎長人がBLをやっているわけですが、また基本的な筋書きは十分にBLなんですが、細かいパーツが少しずつ「なんか変」なんですね。BLとして読んでもちゃんとしていますし、変なまんがとして読んでも面白い。両方成立しているというさじ加減の巧みさが、天城れのという作家の最大の魅力なんだと思います。

 さて他にも買ってきたので、天城れのを続けてレビューしていきます。それに問題作もありますしね!

海王社
2005年7月20日発行
2007年2月8日購入

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2007年2月 5日 (月)

天城れの「恋愛紙上主義!」

Photo  満は中学時代、高校の文化祭で漫研の部誌を手に入れる。そこには120ページに及ぶ正統派少女まんがの大作が収められていた。青山美由という著者に憧れる満。その高校に進学し漫研の扉を叩くが、実は美由は男だった。驚く満だが、的確な指導をしてくれる美由に、次第に心惹かれていく。満はまんがを描きはじめるが、みんなには隠そうとする。なぜならそれは自分と美由をモデルにしたボーイズラブ作品だったからだ。しかし美由に知られてしまう。翌日、美由と満はネームを切ってくる。それはお互いへの思いが詰まったものだった。表題作「恋愛紙上主義!」の連作を中心とした作品集。

 いやー、オバカです。どの作品もどんどん展開がアホ臭くなっていくのが本当にたまりません。満を奪おうとする聖ブルジョワ学園(…)の部長が現れたり、クラス一の可愛い男の子を守るためにコワモテキャラが学園祭で女装したり、売れない芸人が「BL芸人」として売り出そうとしたりと…ここまでやってくれるとなにも文句はありません。いちいちしょーもない展開にしていく姿勢は本当に頭が下がります。それでいて絵柄は顎長人系の耽美なもの。手を抜いてさらっと描いている様子は見られません。つまりは、あほうなことを、マジメに、一生懸命やっているのですね。しかも勘違いや天然ではなく、ひとつの「芸」として。以前はこの人の絵に違和感があったのでちょっと敬遠していたのですが、単行本で読むと破壊力はバツグン。すっかり大ファンになってしまったのでした。
 もう一ついいのが、自分の作品に対して客観的な視点を持っているところですね。例えば「恋愛紙上主義!」は、漫研が舞台なものですから、当然まわりに女子部員…当然腐女子…がいるわけです。そして彼女たちはきわめて的確に満と美由にツッコミを入れるのですね。それは画面のこっち側にいる読者の気持ちを代弁するわけです。この一歩引いて客観視する視点があるために、あほうな展開がより強調され、ある種のドライブ感が生まれてくるのです。

 「BLの魅力のひとつはしょーもなさにあり」というのは、昔も今も変わらぬことですが、ここにまた輝く星が現れたのでした。しかもこのところ単行本ラッシュですし! そこでこれからちょっと立て続けにレビューしてみたいと思います。

海王社
2006年11月20日発行
2007年2月5日購入

恋愛紙上主義!
天城 れの

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年2月 3日 (金)

神楽坂はん子「夢の果てまでも」

kagurazaka_yumeno  白髪メガネ美人の柏森は、3年間付き合っていた穂積課長と別れたばかり。穂積課長は逆玉に乗るために結婚するというのだ。道ばたで泣いているところを男に見られてしまう柏森。仕事で着ぐるみのイベントをやることになるが、着ぐるみの中に入っていた男は、泣いているところを見られた男、司だった。司は穂積課長の後輩で、趣味が似ているという。柏森の弱いところを見てしまった司は、急速に柏森に惹かれていく。緊急事態のため、柏森と司は着ぐるみを着て営業しなくてはならなくなるが、着ぐるみを脱がすとき、司は我慢できずに柏森のうなじにキスしてしまう。この他穂積課長と結婚相手の弟の略奪愛を描いた「明日では遅すぎる」、幼なじみの国税査察官と代議士秘書の関係を描く「見知らぬ人でなく」、大きな運命に巻き込まれる代議士の息子とその運転手を描いた表題作「夢の果てまでも」ほかが収められた作品集。

 いやー、もうですね、お話が切ないんですよ。例えば表題作「夢の果てまでも」ですが、代議士の息子の創が切ないんです。大物代議士の息子として楽々な生活を送ってると思えば、危機に陥り、次第に汚れていきます。ヤケになったりもします。ですがずっと仕えてきた運転手の輿水が心の支えになっているので、最後まで折れないのですね。その裏には、深く傷ついた創の心があるわけでして。それをなんとかしようとする輿水もまた切ないのでして。幼なじみが好き合いながらも敵味方に分かれてしまう「見知らぬ人でなく」も、相当なモンです。ああああ切ないですなぁ!
 それから、この本に収められているお話全部が、実は微妙にリンクしているというのがいいんですね。穂積課長=柏森=司のシリーズは当然なんですが、「見知らぬ人でなく」「夢の果てまでも」も、そこはかとなくリンクしています。好きなんですよこういうの。作品世界がぐっと広がるっちゅうんでしょうか。
 まあちょっと微妙なところもあります。例えば着ぐるみのお話とか。攻が着ぐるみを着て登場するんですが…それってギャグ? ギャグなの? と問うてしまいたくなります。実際は外の可愛さと中の人のハァハァっぷりがよいコントラストを成していて、萌えどころなんですが。また想像の斜め上を行くぶっ飛び展開もあります。やっぱりだめな人はだめかもしれないですね。ですがギャグっぽいアイテムを、ちゃんと萌えにつなげているのは面白いところで、ワザを感じます。
 この人の場合、ギャグっぽく等身を下げて描いた絵がいいんですね。いい味があるっていうんでしょうか。多分ギャグは相当得意なんじゃないかと思います。あと女性の描き方がうまいんですね。穂積課長の部下の女の子ナベちゃんとか、穂積課長の結婚相手とか、とても生き生きと描かれています。「いいBLは女性の描き方がうまい」というのは私の持論なんですが、この人の場合もそうです。てことは女性を中心にした作品とかも描けるという訳でして。
 この人のBLでない作品も見てみたいと思います。ギャグだといっそう生きるでしょうね。4コマ誌で大ブレイクした牛乳リンダとかの例もあるので、そちらでも活躍できるのでは…なんて思いましたよ。

芳文社
2006年2月15日発行
2006年2月2日購入

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年1月26日 (木)

水上シン「うしろから抱きしめて」

mizukami_ushiro  舞台は戦前の高校。東条高校柔道部の主将、二ノ宮惣次は、美形童顔で、多くの男に言い寄られているが、全て投げ飛ばして拒んでいる。副将で幼なじみの井原浩一郎は、惣次のことを好いているが、言い出すことができない。町内会の夏祭りに、惣次は浩一郎を誘う。しかし浩一郎は、惣次が多くの男に誘われていることを聞き知っている。それに対し惣次は、「俺より弱い男に用はない」と返す。惣次に勝てば、進まない関係を一歩進めることができるとたくらんだ浩一郎は…。超リッチで世間に疎いおぼっちゃま・尚人と、庶民的でしっかりしている功の、でこぼこギャグタッチシリーズを含んだ短編集。

 時代物がいいですね。中国の王宮を舞台とした「反魂香」、戦前の高校(ってちょっと突っ込みたいところですが)を舞台にした表題作「うしろから抱きしめて」。この人の絵は独特のなまめかしさ、古風なツヤがあるのですが、それは時代物とよく合います。その一方で、ギャグ作品も得意としているところが面白いですね。なんたっておぼっちゃまの尚人は超ゴージャスでヘリ通学(!)ですから。庶民の生活を知るために巨人の星でお勉強ですから。まあちと滑り気味ではあったりしますが、それもまたご愛敬ですから。
 それから、お話の基本構造が、性格がしっかりしていて体格ががっちりした攻が、細めの受をしっかり抱き留めるというものになっているのがよいですね。これはもう盤石の構造ですよ。攻はもう男の甲斐性っていうんでしょうか、生活力にあふれているんですね。バリバリ稼いで受を養う力があるんですよ。おぼっちゃまのパートナーの功は、「実家の資産がなくても俺が養ってやる」と口説きますし、それが当然と思っていますし。乙女心がヅキュンと刺激されませんか? 攻の姿はあたかもローマイヤ先輩のごとくです。当然男であってもキュンとしてしまうわけです。

 ちょっと前の作品だと、絵柄がありがちな顎長人系のものなのですが、最近の作品では、俄然絵にツヤと独特の美しさが出てきています。やおいのお約束を離れ、自分らしい絵柄を見つけ出してきている、まさにそのとっかかりに来ているように感じます。すでに結構地位を築いている作家だと思いますが、本格的に頭角を現すのはこれからでしょう(BLに移り、CGを使って独自の絵柄世界を開いた星野リリィのように)。12月に出た新刊も買ってこないといけませんな。

芳文社
2005年10月15日発行
2005年10月6日購入

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年1月20日 (金)

林家志弦「ストロベリーシェイクSweet」1

hayashiya_straw1   タレント事務所に所属する樹里亜は、同い年の新人タレント蘭の世話を任される。最初は渋る樹里亜だが、直接会った蘭は樹里亜のモロ好み。最初はキスしたい、抱きしめたいと思うだけだが、その気持ちが恋だと気づかされてしまうと、後は突っ走るばかり。寝ている蘭にチューしようとしてみたり、蘭のエプロン姿に鼻血を吹いてみたり。ところがいざ二人で泊まることになると、寝ぼけて抱きついてくる蘭に指一本出すことができない樹里亜。

 いま私はめちゃくちゃ興奮しているのです。いやー、パーちゃんはやっぱり激・本物でした。まんだ林檎の『画面の告白』で、林家志弦はレズとして描かれていましたが、ギャグでもなんでもなくて、もうド直球じゃあないですか。「電撃大王」で絶賛連載中の『はやて×ブレード』も、百合全開の作品ですが、こちらの方が純度が高いです。そしてなによりめちゃくちゃ面白い! 突っ走りまくる樹里亜の姿は、笑えるだけでなく、見ていてとても気持ちいいものです。なんたって熱血なんですもの。「らんらん好きだー!」という樹里亜の気持ちは、島本マンガのように燃え上がります。かといって島本マンガほど暑苦しくなく、ちゃんと女の子らしい柔らかさも忘れません。マンガを読んでこんなに興奮したのは久しぶりです。「ハチクロ」の第1話を読んだときのことを思い出します。

 で、この作品は基本的に女の子しか出てこない、激百合作品なんですが、いわゆる「レズ」という感じじゃないんです。レズという言葉が持っている、どことなく後ろ暗い雰囲気はなく、「きゃーかわいー」という感じなんですね。「好き」という気持ちも、のめり込んだり、縛りつけたりといった、暗さをともなったものではなく、「理由はよく分からんが好きだー」という、高揚をともなったものです。たとえていうなら、「スキスキスーフワフワフー」という感じでしょうか。すごく明るくてすかっとしているんです。ですが胸がキュンとなり、萌えをともなうところはやっぱり恋なんです。
 この恋は、ボーイズラブによく出てくる「好き」の気持ちと、とてもよく似ています。それまで友だちだったアイツの可愛さに気づいちゃって、ドキドキして眠れなくなる男の子の気持ちと、ほぼ相似形といえるではないですか。そう、ですからこの作品は、形式こそ百合作品ですが、内実は「魂のやおい作品」といえるのです。

 そしてこのことから、ボーイズラブというものが、どこから生まれてくるかということが見えてきます。ひとの中にある乙女心が、かわいいものやかっこいいものに対してヅキュンときて、ドキドキして、それを好きになっていく。こうした心の動きが、ボーイズラブという一大ジャンルの背景となっているのです。もちろん好きになる対象は男でも女でもかまいません。加えていうなら、この心の動きを生み出すのは「乙女心」であって、乙女心の持ち主は男でも女でもかまわないのです。

 マンガとして上手いのに加えて、ギャグも充分。そしてやおい心の根源を示唆する内容。これは興奮しないではいられないではないですか。一年初っぱなから、でっかい衝撃を受けた作品です。

 ファンサイトはこちらです。

一迅社
2006年2月1日発行
2006年1月17日購入

| | コメント (2) | トラックバック (0)