2008年6月12日 (木)

北別府ニカ「すくすく好き好き」

 智は年齢の割にはちっちゃく、かわいい感じの高校生。隣に住む双子の一郎、二郎兄弟とずっと幼なじみで、朝食を一緒に食べたりする仲。一郎と智はひょんなきっかけで「かきっこ」をする仲になっていたが、その関係に智は迷っている。好きじゃなかったらこんなことしないだろうと。自分は一郎のことを好きになっているのに、それを一郎に問いかけると、いつもはぐらかされてしまう。バイト先で飲まされてしまい、酔って抱きついた相手は二郎だった。関係がばれるのではと焦る智だが、二郎にはすっかりバレバレ。どうして両思いなのにちゃんと告白しないのか、と諭されてしまう。智と一郎の恋と、恋愛にはうとかった二郎の恋を描いたシリーズを含む短編集。

すくすく好き好き (バーズコミックス リンクスコレクション) すくすく好き好き (バーズコミックス リンクスコレクション)
北別府 ニカ

幻冬舎コミックス  2008-03-24
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 いやーめでたいめでたい、二冊目の単行本です。北別府ニカといえばメガネ、というイメージがありますが、この作品は意外とそんなことはなく、メガネなしのキャラが多いです。唯一の眼鏡キャラとして「忠犬攻」ってキャラクターが出てきますけど。
 メガネがないからフェチ度が足りない…と思えるかもしれません。ですがこの作品には別の魅力があります。登場する男たちが実に「男性」らしいんですよ。まあ受の人は細ナヨって人もいるんですが、攻は基本的にちゃんとした肉付きの男性です。一郎も二郎も190近いですし、顔つきも体格もしっかりしています。しっかり「縦に伸びてる」感じですし、すくすく育っていますし、男性的な魅力を漂わせています。そういうリアルな男性がフォーリンラブしたりがっちゅんしたりするのですから…これは生々しくてキク!
 そして彼らは実に高校生っぽい、大学生っぽい雰囲気を漂わせています。将来に悩んだり、授業のつまんなさにだるさを感じたり、サークル活動をしたり。もちろんハイティーンから20代前半の若者の姿をリアルに描いたBLはこれまでも存在しましたが、北別府ニカの作品は生々しさの点で一歩抜けた感があります。若者を本当によく観察していることが分かりますし、そして若者のかわいさをよく見抜いていることも分かります。

 男性からすると、男の子の可愛さや男の体の魅力は、若者であるうちはよく分からなかったりします。自分自身若者なので、相対化して見ることができないんですね。ところが若者とはいえない年齢になってくると、次第に若者をいやらしい視線で見ることのよさが分かってきます。自分が若さを失いつつあることが分かるために、若者の体が性的魅力を持っていることが分かってくるのです。そこでこういうちゃんと育った若者ですから…つい「げへへへへ」という下品な笑みがこぼれてしまいます。男の体のエロさがわかると、世の中なんでもエロく見えるので、楽しいことこの上ないですよ。

幻冬舎
2008年3月24日発売
2008年3月28日購入

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2007年12月19日 (水)

国枝彩香「番人」

 時は戦前。白い髪、赤い目、美しい顔、しかし心の成長は止まったままの少年・霞。その見た目のため、山奥の洋館に幽閉されている。そんな霞の世話をするのは、浅黒いというには黒すぎる肌と、不思議な瞳の色をした寡黙な成年・加納だった。霞の兄の胤彦は久しぶりに洋館を訪れる。洋館は人手に渡ることになり、霞もまた洋館と共に好事家に売られることになったためだ。そこで胤彦は加納に伽を命ずる。そして挑発的に語りかける。霞は加納と胤彦の母との不義の子と考えられてきたが、実は胤彦と母との子かもしれないと。それは加納のナマの感情のほとばしりを見たいためだった。「マガビー」他に掲載された作品を集めた短編集。

番人 (ビーボーイコミックス)
番人 (ビーボーイコミックス) 国枝 彩香

リブレ出版  2007-10-10
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 シリアス作品では、表題作「番人」、「Show Me Heaven」、「空の裏側」が収録されています。どの作品も展開がヒジョーに巧みですね。「番人」では、死んでしまった胤彦の視点から物語が語られます。「空の裏側」では、10年前、好きな人がレイプされている場に居合わせた主人公が、ゆっくりその傷を自分の中に取り込んでいく物語です。どの作品も展開は一本道ではありません。登場人物たちの気持ちは素直には表現されず、回りくどかったり、時には相手を傷つけるような形で現れます。そのため登場人物たちの間には衝突が生まれます。ですが根本にあるのは愛です。愛しているから回り道をする、愛しているから傷つけるのです。ハッピーエンドにならない作品もありますが、それは愛のため。ラブという根っこは実にしっかりしています。そのためやきもき、ハラハラしながら、痛々しいラブを楽しむ構造になっています(だからこそBLっぽくないという意見もありますが)。いやー、やっぱり国枝先生はマンガが上手。ベテランのワザに翻弄される楽しさがあります。
 そしてもう一つ、ヒリヒリするような男の欲望が描かれるのですね。「番人」では、胤彦は加納の本当の情動を見てみたいと渇望しています。「空の裏側」では、レイプに伴う残虐な欲望、認めたくないけれど確かに存在する加虐性が描かれます。これは男性にも理解できるものですね。確かに女性が想像して描いているなという印象はありますが、そこは名手・国枝。わざとらしさやインチキ臭さが伝わるような展開にはなりません。その強い心の動きは、物語の振幅を強めますが、男性への衝撃力も持っています。

 とまあいろいろ書いてきましたが、この本にはものすごい問題作が収録されています。「めぐり逢い…COSMO」です。

 宇宙世紀801x年。地球連邦と独立軍の戦いは激しさを増していた。地球連邦のエースはコールタール艦長。彼は自他共に認めるぶさいくだったが、心根のやさしさと優れた戦果で一目置かれていたのだ。ある日コールタールは独立軍の捕虜を捕らえる。それは美形の兄によく似た青年だった。

 えーと、銀英伝とかそういうのを想像すると足下をすくわれることになります。なんたってB-Boy Phoenix「不細工特集」に収録された作品ですから!
 特筆すべきは毛へのこだわりでしょう。髪の毛うねるうねる。ぶさいくなんで衝撃力ありまくりです。胸毛腹毛指毛腕毛描かれまくりです。そして一番のこだわりは鼻毛。全てのコールタール艦長の顔にはご丁寧に鼻毛が描かれています…一コマの例外もなく! 国枝先生が超ノリノリで描いていることがビリビリ伝わってきます。もともと国枝彩香はギャグっぽい表現も得意としてきましたが、いざ本気となるとえらい破壊力。漫画の上手さがギャグでも遺憾なく発揮されるのでした。
 シリアス作品も面白いんですが、この作品だけでも間違いなく買う価値があります。一冊で二回楽しめる、お得な作品集といえましょう。

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オレのやおいさんに手を出すな! さん
BL系。さん
こんな本よみました… さん
霖雨の彼方 さん

リブレ出版
2007年10月10日発行
2007年10月10日購入

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2007年9月 8日 (土)

深瀬紅音「恋はすぐ隣」

恋はすぐ隣 (GUSH COMICS) 恋はすぐ隣 (GUSH COMICS)
深瀬 紅音

海王社  2007-08-10
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 萌(もゆる・かわいい系・兄)と冴(さゆる・体育会系・弟)は二卵性の双子の兄弟。両親が離婚したため一時離ればなれだったが、復縁したために同じ学校に通っている。萌はずっと誰にも言えない思いを抱いていた。それは冴を好きになってしまったこと。男どうしだし、何より離れることができない兄弟であるために、萌は苦しむ。しかし我慢しきれずに寝ている冴に触れてしまい、その思いはばれてしまう。俺も萌のことがが好きだった、という冴に対して、萌はまだ信じることができない。「たとえ好きだって両想いだって知ったって…恋人みたいになれないんだから余計苦しいだけだよ!」
 「ポケット・センチメンタル」のシリーズだが、萌と冴の関係に重点を置いているので、単体でも読める作品。「GUSH」に連載されたもの。

 ボーイズ・ラブというと、ホモ上等というところがあって、男どうしがするっと恋愛関係になってしまうことが多いものです。「男とか女とか関係ない、お前が好きなんだ!」というBLの常套句は、その無理さを隠蔽するためのワイルドカードだったと言えるでしょう。「好きという気持ちがあればよい」「ホモ関係に由来する苦しさとは無縁である」という宣言だったのですね。この「切り離し」があったために、BLはJUNEのくびきを離れ、急速に一般化したといえます。ですが、これがBLを観念の遊びにしてしまった感は否めません。なんたってそんなカポーは目に見えるところにはいないんですから。
 ただBLという言葉ができてから10年以上経ち、BLも成熟してきました。そうなるとBL表現も深まってきます。キャラクターの内面も丁寧に描かれるようになってきます。この作品はまさにその過程を経て描かれたものと言えるでしょう。萌も冴も葛藤します。抱いてはいけない思いを抱いてしまい、悩み、苦しみます。世間との関わりも考えなくてはなりません。それがいいんですよ! 加えて萌と冴の苦しみは、非常に細かく、リアルに描かれます。思いが通じ合った後も二人はいろいろ悩みます。それは当然でしょう。兄弟という障害、男どうしという障害があるのですから。これはBLを読まない男性にも生々しく感じられる葛藤です。その生々しさが作品に強い説得力を与えるのです。
 このように二人は悩むのですが、二人の想いは、そうした障害を乗り越えるほど強いものです。我慢しきれなくて二人が重ねる唇、嬉しさのあまり萌が流す涙は、二人の想いの強さを如実に示します。そして二人は逃げるのをやめ、二人で生きることを選びます。それが強いカタルシスを生むのです。これはたまりません!

 そうした説得力のある物語が、もろ私好みの深瀬紅音の絵で語られるわけです。もう萌とかもの凄くかわいいわけですよ。涙とか流しちゃうわけですよ。加えてセックスシーンも逃げがなく、しっかりしています。かわいい絵でハードな描写ですし、かわいい絵でしっかりした男性の骨格になっているのは、確かにちょっと不自然に見えます。ですがしっかりした描写はリアルさにもつながっています。

 ロリショタ系なので、かわいいだけの作品に違いないと、見てくれだけで判断してはいけません。この作品は非常に深みのある作品です。そして男性にとっても強く響く作品になっているといえるでしょう。見た目が取っつきやすいですし、物語も男性にとって心当たりのあるものですから。だから是非男性に読んでほしい作品ですね。

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霖雨の彼方さん

海王社
2007年8月20日発行
2007年8月26日購入

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