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当時のアニメの状況(1) 渇望されるオトナ向けアニメ

 このブログでは、アニパロが成立するのは79年から82年、という説を掲げておきます。その理由はおいおい明らかにしていきたいと思います。
 この時期、アニメは大きく変わっていき、この変化がアニパロの直接の背景になっています。では、当時の状況はどうだったのでしょうか。

 79年当時、「オトナが見るアニメ」が渇望されていました。ここで「オトナ」というのは、年齢的に成年に達している人だけを指すのではなく、子どもの次の段階に進みたいと思っている人、中学生から高校生のティーンも含みます。精神的に実際に成熟しているかどうかは関係なく、「もうコドモじゃない」と考えている人、という意味です。
 74年に「宇宙戦艦ヤマト」が放映され、77年には映画化され、ブームになります。なぜヤマトがヒットしたかというと、ヤマトは「オトナが楽しめるアニメ」だったからです。様々な若者文化が勃興してきた70年代、若者はアニメも楽しむようになってきました。アニメの制作者側も、子ども向け作品と割り切ってアニメを作るのではなく、壮大なストーリーや、考えさせるテーマを作品に込めるようになってきました。富野喜幸が監督を務めた「海のトリトン」(72)では、敵を悪だと思って戦ってきましたが、実は自分たちの側が悪だったのかもしれない、というラストシーンとなっていました。長浜忠夫監督の「超電磁ロボコン・バトラーV」(76)では、敵のリーダーとして美形キャラ・ガルーダが登場し、愛のために母を裏切って死ぬというストーリーとなっていました。富野喜幸監督の「無敵超人ザンボット3」では、敵異星人と戦うと町が破壊され、主人公たちは非難される、という描写が成されていました。すでに内容的には、オトナの鑑賞に堪える作品作りが成されていたのです。
 ところが世間のアニメの見方は、「アニメは子ども向けのものである」というものが圧倒的でした。なんといってもアニメ制作のスポンサーとなる企業がそう考えていました。アニメはオモチャを売るための宣伝媒体。そのためロボットが登場しなければいけないし、どう見ても不合理だけど合体しなければいけないし、毎回新しい敵と戦って、カタルシスを与える形で勝たなければいけない。主役であるロボットもおもちゃメーカー主導でデザインされることになりました。象徴的な例が「コン・バトラーV」の後番組である「ボルテスV」(77)ですね。アニメスタッフは、おもちゃメーカーから提示されたロボットのデザインを、一切変えることは許されなかったといいます。リアルロボットのはしりとされる「機動戦士ガンダム」(79)も、その構造から逃れることはできませんでした。トリコロールのカラーリングもそうですし、いかにもおもちゃじみたGメカ、そして毎回ジオンの新型メカが登場する後半と、いずれもスポンサーからの要求であったといいます。…まあ、その新型ラッシュが、後にプラモデルにするモビルスーツ不足にあえいだバンダイを助けたのですから、皮肉なものですが。
 それから当時、アニメに興味を持ち始めた若者たちの親世代は、やはりアニメを子ども向けのものと考えていました。大人になったらアニメは「卒業」するもの、と考えていたのです。もちろん同世代の若者の中にも、そう考える人がいました。つまりアニメを愛好することは、子どもっぽい、褒められたものではないという考えが強かったのです。
 アニメを愛好するようになった若者は、アニメに見応えのあるドラマがあることに気づいていました。キャラやメカの魅力があることにも気づいていました。オトナの視点で評価しても面白いと感じられる作品なのに、アニメ全体が子どものものと考えられていたために、アニメは不当に低く評価されていると感じられたのです。またアニメを見ること自体も、強く制約されることになりました。「こんなくだらないものを見ているんじゃなくて、勉強しなさい」と言われるのは、ほとんど決まり文句のようなものでした。ですからアニメを愛好する若者たちは、周囲の大人を説得し、正々堂々とアニメを見るためにも、「大人向けのアニメ」を渇望していたのです。

*当時のロボットアニメのデザインについては、カラー版 超合金の男 -村上克司伝- (アスキー新書)に詳しく載っています。

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